後巷説百物語 京極夏彦
後巷説百物語 作:京極夏彦 (角川書店)
はい、直木賞受賞作。単作で読まれた方もいらっしゃるでしょうが、「前にお話しました~」という話は全て前作・前々作で語られていますので、興味をもたれた方は是非、読まれることをオススメします。
時代は明治のザンバラ髪が定着した頃、山岡百介は一白翁と呼ばれる隠居の好々爺になっておりました。そこに相談を持ち込んでくる怪異がらみの捜査に行き詰まった巡査とその仲間しめて四人。
中身は一白翁の昔話、やっぱり又市たちが活躍するわけですが、相談事の答えですから又市の仕掛けは話したり話さなかったり。身の回りの世話をしてくれる小夜さんが皆が帰ったあとに「で、真相はなんなんですか?」と種明かしを迫ったり、四人うちの一人にだけ種を明かしたりする構成もあったりで。
途中まで「もうなんだか『飛火槍』で万事解決しすぎじゃねえの?」とか思ったわけですが「山男」のラストあたりから語り口にやられましたよ。
「続」読み終わったときのような衝撃は受けませんでしたが、もう、安らいだラストで泣けますよ。又さんのような鮮やかさはないけれども、人柄のにじみ出たいい仕掛けでした、百介さん。私も百物語終わってほしくなかったです。でもお疲れ様でした。
例によってまた時系列順に並べ替えしたくなったんですが、最後の百物語で百介が語った順でFAなんでしょうな。ちっ、答えが出たら出たでがっかりするもんですな、こういうのって。
後残っている話があるとしたら百介の預かり知らない「又市たちの最後の戦い」ぐらいかな。いくらなんでもそれは語られないだろうし。別に京極堂にはつながってないでしょ? いや、可能性はないとはいえないが。
妖怪を媒介にして夢を追うことはなくなった現代だけど、それを埋めるものはあるのかねぇ。都市伝説にゃあムリだしね。又さんに温かくて時に残酷ないい夢見させてもらいました。ありがとう。
小豆洗い 野鉄砲 白蔵主 狐者異 舞首 飛縁魔 芝衛門狸 船幽霊 塩長者 死神 柳女 赤えいの魚 帷子辻 天火 山男 手負蛇 五位の光 老人の火 風の神
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