米澤穂信講演会

6月17日、ミステリ読みでもないのに、しかも愚者のエンドロールとクドリャフカの順番が未読なのに同志社ミステリーサークルさん ttp://www.donet.gr.jp/~dms/cgi-bin/wiki/wiki.cgi主催の米澤穂信講演会 ttp://www.donet.gr.jp/~dms/event.html に行ってきました。体力がないのとあとに予定があったのとでいらっしゃってたはずのネットの中の方々にはご挨拶せず終いでした。申し訳ありません。

13時開場とのことでしたが、「定員150名」との数字に不安を覚え、12時30分ごろ到着したところすでに校舎の入り口には案内の方がいらっしゃってまして入場できました。一番乗りでもなかったです。最終的には170人ぐらいの方がいらっしゃったらしいです。女性も多かった。メイドさんとソフトゴスロリさんがいてびっくりした。

米澤穂信先生はTシャツにジャケットといういでたちで、メガネをかけてらっしゃいました。話しやすそうなお兄さんといった感じ。事前にネットで募集した質問に答えるという形式で、そのあとも引き続き質問会がありました。以下、自分なりのメモ。正確さは保証できません。雑記:ゆらゆらゆらゆらさんがきっとうちより参考になると思います。

座右の銘

引用元は忘れたが「才覚を持たない者は技術をもたなければならない」
あとディクスン・カーの「火刑法廷」の中で編集者が言った「この事件を解いたら印税を25%にしてやる」という言葉はとてもいい言葉だと思う。

小説家になるに至った経緯

大学2年生のころにネットで小説を公開しはじめた。卒業後に本格的に投稿作を書いた。

幼少期から中学、高校時代にかけて

小学校の通学が1時間30分くらいかかり、その間に物語を考えていた。中学も遠かったのでTRPGのことを考えていた。高校時代には物語を考える仕事につくだろうなぁと漠然と考えていた。(空想癖とは違います! 物語を考えていたんです!)

これまでの読書遍歴

文庫落ちになっていた綾辻行人『十角館の殺人』をたまたま手に取ったのはすごく幸運だった。それからミステリを読むようになったが、最初に手にとったのはクリスティの「なぜエヴァンスに頼まなかったのか」(『愚者のエンドロール』の英題に使わせてもらった) あとM.クライトンや北村薫、山口雅也『キッド・ピストルズの妄想』など。

尊敬する作家

「尊敬する」という言葉は人格に捧げるべきだと思うので、日本のミステリ界から黒岩重吾などになるのだろうが、あまり読んでいない。
好きな作家は泡坂妻夫や北村薫など。

過去の青春ミステリで意識するものは

「青春ミステリ」という言葉が少し違うな、と思っている。

執筆する際の「これだけは気をつけている、譲れない」といったこだわりは

登場人物が生きているんだ、ということを忘れないこと
文頭が「ー」や「っ」、一文字と鍵カッコなどにならないようにすること
見せ場のシーンは見開きで終わるようにすること。ex.夏期限定P227 さよなら妖精文庫P297 『さよなら妖精』文庫はこのために手を入れた。

ライトノベルに対する思い入れ、今後ライトノベルレーベルから発表したいか

今は書ける状況にない。機会があれば、イラストを逆手に取ったミステリなどを書いてみたい。

「日常の謎」系ミステリに対して何かポリシーは

犯人がトリックを用いて何かを隠せばそれは日常ではなく、一種のファンタジー。ミステリ時空に主人公を引っ張る存在として、千反田がいる。

実際の出来事を小説のネタに使ったり、登場人物に誰かモデルに使ったりすることはあるか

影響を受けているかもしれないが、モデルはいない。
古典部シリーズは実体験アリ。
しいて言えば、福部里志に似ているかも。(データベースではない)

シリーズもので探偵役を務める主人公が、消極的なキャラクターばかりなのは何故ですか

折木は成長しているから。紺屋は働いてはいる。日常的な人間は謎を解かない。

作品中の女性からは「強い女性」という印象を受けるが、女性を架空絵出意識されていることは

自戒として男性から観て都合のよい女性は書かないようにしている

古典部シリーズには“何かの「特別」になりたい”という気持ちがちりばめられていると思うのですがご自身の経験からくるのでしょうか

高校までの、自分は人とは違うと思っているような万能感を描きたいと思っている。
自分の経験としては、ネットで化け物に会う前の自分がいるかもしれない

『さよなら妖精』の古典部バージョン

折木→守屋 千反田→白河 マーヤ→千反田家に居候 大刀洗→オリキャラ 文原→福部
古典部バージョンは二個目の推理が終わった段階で終わり、半月の下で折木と大刀洗が対峙するシーンはなかった。

なぜどの作品も「のこされた文書を読み解く」形式になっているのか

見直してみたらほんとうにそうだった。(笑) 構えとしてそうなってしまう。あえて言えば好きだから

SFをよく読むのか

あまりよまない。北野勇作の『かめくん』や、河出文庫などをつまみ食いする程度。エドワード・ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』は好き。

ご自身はスイーツがお好きなのでしょうか

誤解!美味しいものが好きです。
 『いちごタルト事件』はタイトルがずっと決まらず「短編集」と呼んでいた。冗談で出したタイトルが決まってしまい、自分の中での創元推理文庫のイメージと合わず戸惑った。
夏期の取材で3日間ぐらい仕事ができないほどに倒れてしまった。「夏」のスイーツがあまりなくて苦労した。使った中では「フローズンすいかヨーグルト」が一番好き。
カステラは贈答用に最適、というだけ。

『犬はどこだ』を書くにあたり意識したハードボイルド/ネオハードボイルドの作家は

頭の中にあったのは北村薫「盤上の敵」。ハードボイルドとして書いたのではない。古典部や小市民では書けないミステリらしいミステリが書きたかった。編集段階で宮部みゆき「火車」に似ているといわれた。最終稿ではマイクル・Z・リューインですねといわれた。
文体がハードボイルドっぽいのではないか。影響を受けた心当たりがあるのは樋口有介。

本格ミステリを幼少の頃より愛読してきたそうですが、実際に尾活気になっておられる作品には、微妙に「(いわゆるガチガチの)本格」からのズレや逸脱があるように思われますが。

今はガジェットが使われすぎてなくなってからまた人によっては過剰に用いられている時期だと思うが、自分がガジェットを使うのには照れがある。

『犬はどこだ』のように男同士のコンビを書く場合と、小市民シリーズのように男女の関係を書く場合で違いはあるか

謎を解きたがっている小市民シリーズでは人間を人間と思っていない部分がある。もっともそれも夏期までになる。性別というより人物による。

新作『インシテミル』について

ガジェットへの照れを捨てて全面に押し出したい。
仮題は「ミステリに『淫してみる』」の駄洒落。

好きなゲームは

メタルマックス2 ロマンシング・サガ1 タクティクス・オウガ

競作してみたい作家さんは

忘れてしまうか、敬服してしまうかのどちらかなので考えられない。
もしさせてもらえることがあるのなら見劣りしないように頑張りたい。

今後ミステリ以外で挑戦したいジャンルは

ミステリにやりたいことがたくさんあり、10年ぐらいのスパンで見てもやらないと思う。
しいて言えば時代小説

シリーズを完結させる予定

小市民は冬で一回は終わらせる。秋は「秋期限定マロングラッセ事件」
古典部は『さよなら妖精』を別シリーズで出してしまい、2001年に同時多発テロが起きるのもあって先がわからない。
紺屋シリーズは舞台が欲しくて作ったので、完結は考えていない。

影響を受けたマンガ

手塚治虫全集がうちにある。『七色いんこ』『どろろ』など。ほかには藤子不二雄SF短編集やゆめのかよいじ(大野安之)ヴァンデミエールの翼(鬼頭莫宏)など。

読書経験の少ない人に薦める小説

泡坂妻夫『しあわせの書』が量もなく軽く読めて度肝を抜かれるのではないか。

最初にタイトルが決まっていた小説

『さよなら妖精』『愚者のエンドロール(の英題なぜエヴァに頼まなかったのか)』

登場人物の名前の由来

折木→実在の折木温泉や朽木という名字を文字って。本当のところは一人称が俺だから。
千反田→土地をたくさんもってそう、という連想。
名付け本や電話帳を買ってきて使っている。

旧ユーゴを選んだ理由

高校時代、ユーゴ紛争の理由がピンとこず、頭にあった。
大学に入って調べてみて、小説にしてみようと思った。

表紙のイラストや写真はご自身の意向が反映されているのか

『氷菓』は「スニーカーミステリ倶楽部」の第一弾ということで編集の意向で決まった。
『愚者のエンドロール』はミステリ倶楽部の(富士ミスのLOVE寄せのような)方針転換があり、やはり編集の意向で決まった。
小市民シリーズは自分で本屋を巡ってイラストレーターさんをピックアップして、その中で片山さんに無理を言ってお願いした。
装丁は辰巳四郎さんにお願いしたかった。

Do you love me?

『キッドピストルズの妄想』のオマージュ。安楽椅子探偵を意識した。SSを発表する媒体がないため、まんたんブロードからの依頼を引き受けさせていただいた。

独自の信念

三十個自己紹介をする、という心理テストを人物でやっている。

ペンネームの由来

「信」は親からもらった一字。米澤はそのまま。サイト汎夢殿の名前からとって「汎信」と読ませていたが誰にも読めないので辞書から引っ張ってきてつけた。ちょっと田舎っぽくてピッタリなんじゃないかと思う。

会って嬉しかった作家

桜庭一樹さんとは創元社の担当さんが同じなだけです!
島田荘司さんや北村薫さん。

同世代で意識している作家

しいて言えば、さっきガジェットを多用しているといったのは北山猛邦さんのこと。

めっちゃ長くなったー!
「才覚を持たない者は技術をもたなければならない」はどっちにしろ耳に痛い言葉だ。その方式からいくと小山内さんは幼いからかー! えるは得流? など色々発見のあった面白い講演会でした。
ご自身もアトピーでいらっしゃるそうで、ああ、紺屋の苦労はこんなところからも、と思いました。握手していただいた手は温かかったです。
編集さんらしき人や作家さんらしき人の姿もあり、名刺交換の現場を見てしまいましたよ! わお! ウィンドバードさんのコメント欄にはその後のこぼれ話も。

そして予定、だったものがキャンセルになってしまったので、帰りにパフェを食べてきました。豆乳マンゴーバナナヨーグルトパフェ! なげーよ。夏期限定ではないようです。その意味ではミニストップのアップルマンゴーパフェのほうがそれっぽいか? 色はトロピカルだよ。

運営の方々、米澤先生、お疲れ様でした。もっともっとファンになりました。

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ライトノベルを中心に、ぐだぐだとバカなコメントを書きます。やってるときは燃え多め。

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