カテゴリー ‘ その他(軽)小説

重力ピエロ 伊坂幸太郎

重力ピエロ 作:伊坂幸太郎 (新潮社・新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫) ISBN : 4-10-459601-9 発行年月 : 2003.4

初の直木賞候補作。129回ですね。本屋大賞五位。
「レイプ」とか「癌」とか「ストーカー」とか暗い題材扱ってるんだけどモットーは「深刻なことは陽気に伝えるべきです」みたいです。暗くないです。でも色に例えると灰色かな。両方主要な構成物であるから。暗いような明るいような表紙が合ってるなと。兄弟と親子の物語です。家族ですね。
連続放火事件と落書きの関係を追ううちに物語が進んでいきます。

不思議な感じはいつも通り。犯罪者が平然と存在するのもいつも通り。伏線が入り乱れるのもいつも通り。クロスオーバーもいつも通り。伊藤と黒澤が出てきた。黒澤は探偵やってる。またカウンセラーになることをを薦められてた。時系列的にはオーデュボン→ラッシュ→ピエロですね。いいかげんまた人物表が作りたくなってきたころです。
でも泉水と春の兄弟の生年月日が特定できたりするところもいつもとは違うのかな。タイムスリップネタでは年代隠してあったけど。

章っていうより大段落じゃない? と思えるようなコマ切れな章題の設定で、調べ物には重宝しました。DNAに模してあるのかな。泉水と春の関係も。
すかっとはできなかった。重力はなくなったように見えるだけだもの。本当になくなったりしない。見せかけるだけにもたくさんの労力が必要になる。兄弟はそれもわかっているだろうが。
夫婦と子どもたちは、最高の家族であったことは断言できる。

あのさ、「陽気なギャング」の公式ガイドブックに兄弟の名前が「せんすい」と「しゅん」ってルビが振ってあったけど、そうなの? 普通に「いずみ」と「はる」だと思ってた。そして冷や汗かいた。(超個人的事情)

にしても本当に伊坂が直木賞とってしまう前に、コンプしたいな。東野も衣良も獲れたんだし獲れないだろうか。(どんな根拠ですか) その前に東野みたいな映画化ラッシュになったら……恐ろしすぎるう! 

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氷菓 You can’t escape 米澤穂信

氷菓 作:米澤穂信 イラスト:上杉久代 (角川スニーカー文庫・角川文庫)

氷菓

古典部シリーズ第一弾。OBの姉の指令により、存続のため古典部に入部した折木奉太郎。しかし古典部には先客がいた。千反田えるは30年前に在籍した叔父と交わした会話を思い出すために、古典部の過去を探ろうとしている。最後に明らかになる真実とは。

ベナレスってバラナシだったのかー! (そこからかよ)一度でいいからガンガーに浸かってみたい。その前に伝染病にかかりそうな気がするけど。
それとか「曼荼羅絨毯」とかおもしろかった。絨毯って縫うものだったんだ……! どんだけレベル高い手芸部なんだよ。
んで、文章書くのが苦手な人が文集作る部活に入っちゃいけないよー福部。

テーマが「さよなら妖精」と同じだなぁ、と思っていたら、元々「さよなら妖精」がこの古典部シリーズで出る予定だったと聞いてひどく納得。そりゃ一緒だわな。
高校の雰囲気が出身校に似ていて懐かしかった。表向き「文武両道」を謳っているもののあだ名は「牧場」だの「温泉」だので、「進学率抜かれたらしいよー」「あー、やっぱり? あははー」なんて会話がなされる学校。文化祭もカンヤ祭ほどにではないにせよ盛んでしたよ。体育祭入れて5日だったかな? ああ、戻らない若い日々。少なくとも私は「後悔しない」なんて言い切れるものでなかったのは確かだったりします。なかなかできないな、そんな生活。

そして、そんな日常の描写もいいのだけれど、最後に明かされるタイトルの由来が。やっぱりガツンときて。優しい英雄の悲しいわけ。しばらく「氷菓」を食べる時に感慨深い気持ちになりそう。……青春っていいなぁ。この時期にネットにふれてしまうかもしれない今の高校生は、万能感って持てるのかな。化け物がいるからねぇ、ネットの世界。一時期呆然としたもんなぁ、自分の無能さに。それを米澤さんまでもが感じたものだったなんて、正直驚いたけど。

そんなこんなで、さくっと読める残された文書謎解き。おもしろかった。

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ブレイブ・ストーリー 下 宮部みゆき

ブレイブ・ストーリー(下) 作:宮部みゆき (角川書店・角川文庫・角川スニーカー文庫)

ブレイブ・ストーリー(下) ISBN : 4-04-873444-X 発行年月 : 2003.3

うーん、宮部みゆきをもってしても……。(何を期待してたんですか) なんだろう、むかーしコレでもかと読んだけど何一つ身には付かなかった児童文学の香りがするというか。
そんなん多かったか? あり?

結局なんで大松香織は魂抜き取られてたんだろう。誰に? ミツルに? だったらミツルは幻界じゃなくてもその論理を振り回してたことになる。いじめっ子でもなかっただろうに。
それから、ミーナがいつの間にか「猫の少女」から「ネコミミの少女」に変身してたんですが。全然属性違うよそれ!

ミツルの魔力の謎は下巻でもわからなかった……なんでだろう。真実の鏡で帰ってきてたのなら長く生活しすぎですよね。

とか不平不満を並べてるようですが、好きですよ。
そうなんだよな、自分が変わらなければ何も変わらない。変えようがない。
こんな話を小学生の時に読めたら、幸せだろうなぁ。
不幸度に共感できるかどうかは微妙だけど。

漫画版12巻の表紙、誰かわかんねー! と思ったら、裏のあらすじ見たら全く違う話だね。香織も幻界に来てるらしいですよ。姫が美鶴の妹らしいですよ。さすが新説だけあるわ。映画はどっちの話でやるんすか。キ・キーマが大泉洋なんてはまりすぎぃ! ウエンツあんまりうまくないぃ! めちゃ気になるぅ!

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ブレイブ・ストーリー 上 宮部みゆき

ブレイブ・ストーリー(上) 作:宮部みゆき (角川書店・角川文庫・角川スニーカー文庫)

ブレイブ・ストーリー(上) ISBN : 4-04-873443-1 発行年月 : 2003.3

遅れに遅れて今になりましたが、小説単行本上巻の感想になります。

何気に宮部みゆきこのページ初登場だな。読んでないわけではないんですが、読んでるとも言いがたい。蒲生邸事件なんかラジオドラマも聴いたしドラマも観たけど原作読んでないっていう。はははのは。

そしてメディア展開の激しいこの作品。ソフトカバーですがその質量に圧倒された。分厚いよ! 文庫でも1冊700円だよ! 読みにくいわけではないんですが、時間がかかったな。文章にするより映画のほうがこういう世界は説明しやすいんじゃないかと思う。(RPGに疎い人には) エンジンかかってきたころに下巻。超引き。主人公浮き上がったまんま。

ファンタジー書いても宮部みゆき。異界に行くまでにたっぷり1/4使うんだもん。スニーカーの四分冊だったら丸々一冊現世なんだな。小学生に背負わせる背景が苛酷。十二国記より苛酷。魔性の子よりは……ましだろうか。
ゲーム好きなんだろうなぁというのがよくわかりました。

しっかしRPG的世界で「偏差値」出されるとは……主人公成績よくないし。ミツルが優等生過ぎるのだ。きっと。でも「ブレイブ・ストーリー」なんだから主人公に勇気がつくはずだ。
ミツルは326の友達の充さんのイメージで読んでました。で、彼はどうして幻界の魔力を持って現世の生活を送っていたんだろう。説明してよ!

引き込む力はさすがといった感じ。現実を変える力、それは勇気。

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死にぞこないの青 乙一

死にぞこないの青 作:乙一 (幻冬舎文庫)

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫) ISBN : 4-344-40163-8 発行年月 : 2001.10

今、「『暗いところで待ち合わせ』の兄的作品!」なんて帯がついてますが、この「死にぞこない」で削ったエピソードを膨らませたら「暗いところ」になっただけで、主人公の年齢も雰囲気も全然関係ないような……まあいいや。

ホラーですね、ホラー。あくまで「乙一的」に限定した話ではありますけど。裏表紙で「ホラー界の俊英」って紹介されてるし。太っててどんくさい小学生の男の子が、ふとしたことからクラスの最下層に認定されて、1学期を過ごすうちに幻想のパートナーを手に入れて、這い上がる物語。

「ビックリマンチョコ」とか「おぼっちゃまくん」とかがね、もう同世代だなぁと。「ゾイド」はアニメになってからしか知らんかったけど。そうなんだー、歴史長いんだね。

「BULE」がやはり頭をよぎるのですが。彼女は信じて疑わなかったけど、マサオは何事にも怯えている男の子。勉強を頑張っても、たった一つの得意スポーツ・水泳で上手く泳いでも、先生には怒られてしまう。そして余計に怯えてしまう。
途中先生との対決シーンとかは気分がどろどろしてもう読みたかねーよ! となったが、読後感はそんなに悪くもなく。よくもないけど。ああもー、イジメだけはなぁ、本当に気分をへこませてくれるよなぁ。家族に絶対知られたくないし。でも「死ぬ」よりも「殺す」を選択する人は、前向きっちゃ前向きなのかな。アオも含めてマサオなのだから。
「好きなように」書くとこうなるのか。
拘束服の二重人格(?)なんて聞くとなにか思い出すことがありますが気にしない。

「がんばってる結果がこれだから、しょうがないでしょ」
いい言葉だ。しょうがないって思えるようになったら、前向きの第一歩。

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ラッシュライフ 伊坂幸太郎

ラッシュライフ 作:伊坂幸太郎 (新潮ミステリー倶楽部・新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部) ISBN : 4-10-602770-4 発行年月 : 2002.7

ラッシュライフはいろんな意味があるみたいですよ。lashにlushにrashにrush。
いやあ、多視点はだいぶ慣れてきたと思ったんだけどここまで時間も交錯されるとお手上げですよ。いやあ面白かった。物語の数は全部で五つ。でも本当の物語は一つ。舞台は仙台、パトロンにひれ伏すしかない画家と空き巣のプロと、奇跡に魅入られた若者と不倫カップルとリストラされたデザイナー。あと犬。まああと四人ぐらい複数の物語にまたがる人がいたかしら。

なんだか意味深に登場するエッシャーの騙し絵が表紙。文庫では口絵になってるようですよ。あの絵見たらだれでも思うんじゃない? あの一人見上げてる人は何モンだろうって。うんうんとうなずきながら読んだり。

いたらいいなぁ、的ファンタジーも盛り込みつつ、一つ一つの物語も謎が魅力的で、全体の謎ももちろん気になるし、最後の最後まで繋がらないスピード感のある展開がよろしいですよ。

あとカカシが複数回顔を出したり、ああ伊藤はちゃんと警察に自首したんだ(ろう)なと安心したり、え、その銀行強盗は目にしみたりする人たち? と思ったり、リンク探しには事欠きません。ああ楽し。読むならぜひ「オーデュボン」も読んでからをお薦めします。

しかし、唐突なエンディングも相も変わらずといった感じで続きが気になる。とくにリストラ中年。というか犬。その次にバラバラ死体。次点でひき逃げされた死体。これからどうするんだろうなぁ。

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さよなら妖精 THE SEVENTH HOPE 米澤穂信

さよなら妖精 作:米澤穂信 (東京創元社ミステリフロンティア) 

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア) ISBN : 4-488-01703-7 発行年月 : 2004.2 

ユーゴスラビアから来た少女、マーヤ。日本での2ヶ月の滞在の中で「それはなにか、哲学的な意味がありますか?」と何度となく口にした、好奇心旺盛な彼女は「お前に趣味があるとは思わなかった」と言われる主人公、 男子高校生の守屋に強烈な印象を残して帰っていった。1991年7月の祖国に。共和国の名前は告げずに。

穂信初体験。やっぱりミステリフロンティアにミステリを期待しちゃいけないと思った。ちょっとした味付け程度ですね、謎解きは。最後に仕掛けられたものより、日常に出てきた「雨が降っているのに傘を差さない男」とか「祭でもないのに餅を神社に持っていく男」とかが新鮮だったかな。

一応当時には連日ニュースを見た覚えもあり、バルカン半島が弾薬庫だったことも知ってるし、冬季オリンピックが開催されたことがあるのも知っている。あと、ピクシーのふるさとーとか、Wカップの宿敵とか。でも、こんなに詳しく旧ユーゴのこと知らないわけで。民族自決だと思ってたよなんの疑いもなく。ラスト2章の章題が「キメラの死」「美しく燃える街」となっているセンスに感動した。美しくてさみしい名前。

しかしさわやかなんだけどラストのインパクトに打ちのめされた小説でした。日常に風穴を開け、異文化の扉を開けていった異国の少女。知的な友人。ココにいちゃいけない、と誰もが思うときがあるんじゃないのかな。それがみごとに符合されてるというか。なんでも適当にこなす今的ステレオタイプな主人公だったのかな。ボーミーツガールだしなストーリーとしてもヤマとかはないけど。本の名前からしてハッピーエンドにはなりえないんだけどねー。
そう考えるとせっかく白河がフォロー入れたのに箸にもかけてもらえないセンドー哀れ。忘れたいといっているのも、愛してたからだよね。両方の存在を。

6月10日、文庫さよなら妖精にもなるそうなので、よかったらぜひ。

気になったので調べてみた。カンガルーしか知らなかったよってかそれも否定されかけてるのか。ストローとかも同じ類いじゃなかったっけ。
トランプ
明治時代、外国人がこの遊びをする際、「トランプ」と言っているのを聞き、この遊戯に使うカードや遊戯そのものと勘違いしたことから、日本では「トランプ」と呼ぶようになった。
トランプ-語源由来辞典
かぼちゃ
かぼちゃは、天文年間(1532~55年)、ポルトガル人がカンボジアの産物として日本に伝えたことから、当初「カボチャ瓜」と呼ばれ、のちに「瓜」が落ちて「カボチャ」と呼ばれるようになった。
カボチャ・南京(かぼちゃ)-語源由来辞典
カレー
カレー発祥の地、インドではカレーという料理はありません。現在、詳しい由来は解明しておらず、多くの説が溢れています。
* タミール語で「ご飯にかける汁状の料理」を意味する「カリ」が由来という説。
* ヒンズー語で「香りの良いもの」を意味する「ターカリー」が由来という説。
* ヒンズー語で「神に備える食料」を意味する「カリ・アムドウ」が由来という説。
* インド北部の古い料理名「カディ」が由来という説。
そもそもカレーとは?【自由軒オフィシャルサイト】
カンガルー
カンガルーは、J=クック(キャプテン=クック)の率いる探検隊が、オーストラリアでカンガルーの名前を先住民に聞いたところ、「カンガルー」と答えたため、その名前で呼ばれるようになった。カンガルーとは、現地語で「私は知らない」を意味し、J=クック達の誤解による命名という説が多い。しかし、元々先住民がカンガルー類を指す言葉として使っており、誤解ではなかったという説が現在では有力とされている。
カンガルー-語源由来辞典

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聖遺の天使 la reliquia di angelo 三雲岳斗

聖遺の天使 作:三雲岳斗 (双葉社)

聖遺の天使 (双葉文庫) ISBN : 4-575-23481-8 発行年月 : 2003.10

レオナルド・ダ・ヴィンチが探偵役の、歴史ミステリー。イラストはついていないけど、ダ・ヴィンチ本人の絵画で補完しろってことですね。「白貂を抱く貴婦人」その人が出てきます。 チェチェリア・ガッレラーニが天才のリラ(楽器)の弟子にして事件に居合わせた当事者。そして時の権力者ルドヴィコ・スフォルツァがワトソン君。やっぱりというかなんというか、チェチェリアが書きたかったらしいですよ。ちょっと調べるとどんどん背景がわかっていくのがいいよね歴史って。
沼の館でその主、高名な建築家が磔のようなかたちで死んでいた。彼は聖人マルコの聖遺物を所有し、死体発見の直前には天使が見かけられた。折りしも聖遺物の真贋を鑑定するため聖職者が集まっていたときのこと。聖遺物は本物なのか? 天使は何者なのか? といった感じの話運び。

そして雰囲気も中世が色濃く出ている。
光の話をはじめにレオナルドが始めたときは「……印象派?」とか思ったようなわたしはバカですが、キリスト教と微妙に距離を置いた登場人物たちが興味深い。でも彼らを通してでも当時のキリスト教文化の荘厳さは想像できる。そしてそれを突き崩していくダ・ヴィンチの鮮やかさ。
ルネッサンス期だもんね。面白い時代です。ミラノとベネツィアが小競り合いしてたとか知らないしさ。
そしてダ・ヴィンチの奇人ぶりと、チェチェリアの才女ぶりがいい感じだ。それにおいていかれるルドウィゴもお約束。

犯人は目星つくようになってきたよ。ミステリ経験値着いてきたかな。でも仕掛けはなるほどと唸るしか。ダ・ヴィンチに詳しい人ならピンと来るのかな。

むしろ元々「旧宮殿にて」が読みたくてM.G.Hから遡って読んでたので、 今のダ・ヴィンチブームには全然乗ってません。ん? この主張なんかおかしいな。ダ・ヴィンチが出てくるから興味を持ったのは確かだけど、ダ・ヴィンチ・コードに興味を持ってたわけではないんですよ。トム・ハンクスは好きだけど。ジャン・レノも大好きだけど!
しかし、この「聖遺の天使」もキリスト教徒の方が読んだら気分を損ねるかもしれないなぁと少し思いつつ。でもこれを楽しめたということはその人たちよりも楽しいひとときを過ごせたということかな。

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わたしは虚夢を月に聴く The Night Watch under The Cold Moon 上遠野浩平

わたしは虚夢を月に聴く 作:上遠野浩平 イラスト:中澤一登 (徳間デュアル文庫)

わたしは虚夢を月に聴く (徳間デュアル文庫) ISBN : 4-19-905067-1 発行年月 : 2001.8

あ、戻ってきた。と感じた。バラバラの視点で一つの話を纏め上げていく虚無的な青春小説。好きなんだよーこれが。今回の視点は女性私立探偵と、月世界の6つの勢力の一つに属し殺し合いをしている女性大尉と、平和な時代のテクノロジーで作られて戦争が始まっても月の地図を作り続けているうさぎ型ロボットと、現実世界にほころびを見つけてしまった少女。しかしその感想は上遠野作品読みまくってるからこそ得られるものかもしれない。だってVS Imagenator IVですもん。アノ人が狂言回し。やっぱりあいつ、いいヤツなのか悪いヤツなのかイマイチわからん。(だからそういう存在じゃないって)

「月」というモチーフがせつなくてさびしくて、懐かしいものに感じるのは何故だろう。過去に小説や歌詞やらいろんな作品を読んだから、ではあるけれど、そんな作品がたくさん生まれるのは誰もがそう感じてしまう何かを持っているからでしょうか。近くて遠い存在。実は地球に大きな影響を与えていて、時に狂気を表す。そしてここではピンクの霧が死を象徴する世界。

もう、シーマスが好き。考え方も勇気もフォルムも。なぜうさぎ型なんだ! 本書くからってわざわざ紙を製造する必要があるのか! 生きていることっていうことは遊ぶってこと。なにその超楽天的思想。でも、彼が助けたたった一人は、感謝してくれるだろう。喪失感を抱えながらも、へんなオーバーテクノロジーな物体を託されても、それを使いこなしてしまいそう。

「心はどこだ」とか「答えはあなたの心の中にある」とか「自分は取り返しのつかない失敗をしてしまった」とか、考えてしまう言葉だな。そんな気分にさせられてしまっているだけかもしれないけど、その状態に持ち込めてしまう文章はやっぱすごいとしかいいようがないかも。

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アキハバラ@DEEP 石田衣良

アキハバラ@DEEP 作:石田衣良 (文藝春秋)

アキハバラ@DEEP ISBN : 4-16-323530-2 発行年月 : 2004.11

また狙い澄ましたモノ書いたなーと思ったらホントになんかネタ濃かったよ? ああ、そういえばエウレカって映画化まで行かなかったなぁ、みたいな。ヤシガニ料理もネタとして入れたんだったらわたしは作者をちょっと見直す。オタ仲間として。そんな感じにリアリティはあるのかな。

ほかにもファイル交換ソフトが「梅の湯」だったり、あの人のような社長が出てきたり、導く人が「ユイ」だったりとデータベースには事欠かないのでオタなら楽しめることでしょう。それ以外には……どうだろう? 細かなネタはドラマ化しても割愛されるでしょう、というかその方向で味付けはされないでしょうね。ジャニじゃオタクっつってもそこまでじゃないだろうし。六月からだそうですよ。タイコが主役枠から外れてるよ! 納得いかねー。

夢ある話です。社会不適応者が協力して大きなモノを作る話です。才能がある人たちの話です。頑張り屋さんの話です。戦いの物語です。視点が無機物です。
戦いの物語であるがゆえに少しファンタジーな気分です。そこで読む人を選ぶかも。私の場合はおもしれーと感じる自分とそんなアホな、と感じる自分が同居してるような感じです。アキラが一番ファンタジーかな。あと、奪還作戦を実行するか否かのあたりでしょうか。マジでクサイ飯食ったんですかね。もっとスマートな奪還作戦をしてくれるのは……ライトノベルになっちゃうんでしょうか。

あー、でもAI型サーチ使ってみたい。マジで誰か作ってくれないかなぁ。

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ライトノベルを中心に、ぐだぐだとバカなコメントを書きます。やってるときは燃え多め。

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