となり町戦争 三崎亜記

となり町戦争 作:三崎亜記 (集英社)

となり町戦争 (集英社文庫) ISBN : 4-08-774740-9 発行年月 : 2005.1

めっちゃ変。(ほめ言葉) 
戦争は舞坂町にとって公共事業で、隣町と共同で進めるモノ。実感は全くないが広報には戦死者の人数がカウントされ、小学校では子どもたちが銃剣を持って訓練しており、自分は偵察員として辞令を受けとなり町の隣町までの通勤中の様子を報告する。殺人事件も起こる、普通の町。行政と戦争、こんな組み合わせを成り立たせてるのがすごい。それでわけのわからない、現代的「リアリティのない戦争」が浮き彫りになるのがすごい。

そして恋愛モノだったりする。町役場の「となり町戦争係」香西さんという女性が出てくる。のちに偵察のため結婚してとなり町で共同生活を送ることになるのだが、この女性がまた事務的なのである。公務員なのである。そんな彼女と休日の化粧をしてニットカーディガンな彼女がギャップなのである。そりゃ男も堕ちるわ。(え)
もうひとり、外国で戦争という現実を生き抜いた上司の主任がまたメルヘンな存在だ。どうみても気のいいおっさん、伝説だけが一人歩きしている。特徴的な話し方をする。

結局戦争はリアルを持たないまま終わる。一度きりの傷を伴って。舞阪の戦死者数はこの物語の中には記載されていない。となり町の正式名称すらわからない。(正式名称がこれなのか?) まるでテレビの中の戦争と同じで、とてもリアル。まちがいなく戦争の物語なんだよなぁ。そして喪失の物語。答えなんかはないけど。
主人公が語った、「家ができたらそこに自然に人が生まれてくると思っていた」という話が興味深いですね。そのリアリティのなさが、説得力を持ってしまう話。
自分を逃がすために一人の犠牲まで出したのに、そのあとその部屋で平然と生活できるのもけっこうすごいメルヘンだと思うのだが。
あと、闘争心育成樹が押収されたのには何の意味があったのでしょうか。舞坂町ととなり町の関係を表すため? そういうことじゃなくてとなり町側の必要性とかが聞きたいんだが……まあいいか。

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ライトノベルを中心に、ぐだぐだとバカなコメントを書きます。やってるときは燃え多め。

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