空の中 有川浩
空の中 作:有川浩 (メディアワークス・角川文庫)
長いけど、引き込まれてしばらくエセ高知弁が口をついて出そうになるほど面白かった。ハードカバーに擬態したって、たとえ帯のお言葉が高知県知事でも、中身はまんまライトノベルじゃねぇか! ってぷちにキレてみるのもいいけれど、ここはいっそ「ハリウッド映画好きにはいいかもしれない大人向け」と言い換えてもいいような気がする。画面の派手さはないけど人間ドラマがいいね。1600円の価値、十分ありますこよこれ。文庫落ちしてくれればありがたいのには変わりがないが。
未知の生物が出てきて生活が壊されそうになったりあっちこっちでLOVEったりと基本は「塩の街」に似てるっちゃあ似てるんですが、いろんな人の視点がある今作、心理描写も構成も腕挙げたなあと思うんですよ。まったり度は上がってますね。緊迫感は下がってますが。飛行機や自衛隊への愛がにじみ出てるのもほほえましい。
高校生視点と大人組対策本部視点があって、両者が対立する構図になったときにはもしや破滅エンドか? と思ったりもしたけれど、「海の底」って同じ世界じゃなかったっけ大丈夫だよとかいろいろ考えました。
そして女性自衛官でパイロットな光稀のラブコメぶりに顔がにやける。そして春名の交渉が鮮やかなところはあんたセールスマンにでもなったほうが儲かるんじゃない? と思わなくもないが、それじゃあんまりですかね。研究者には見えなかったんだよ。
あと健気な女子高校生には同情したくない。
宮じいに孫がいるのが意外だった。
フェイクやディックの純粋さに癒された。
ああ、海の底も読みたい。
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