天帝妖狐 乙一
天帝妖狐 作:乙一 (集英社文庫)
乙一の二作目短編集。図書館で借りてきたけど、なんか文庫版とは内容が違うらしい。なにい! じゃ絶版にするなよ!
A MASKED BALLは、ネットの中のようなやり取りがされる学校のトイレのラクガキからきっかけで起こるちょっとだけミステリー。
コンビニがあるんだから現代なのだろう。ということはやはりV3は年配の方なんだろうけど、なぜにその名前をペンネームにするか。あまつその由来まで語るか。露骨すぎないかなぁ。
それと、ラクガキは一度始まったら止まらない。止めろってことが書いてあってもね。
正体についてはほどほどにビックリできました。まだ大丈夫!
天帝妖狐はこの世ならざるものに少しずつ変身しながら、あることをきっかけに完全な化け物になった人が語る顛末。
ちりばめられた伏線に、意外な犯人、ちょっとさみしい読後感、と乙一分を存分に供給できるはず。
汽車、村祭り、木の電信柱、地上げ、テープレコーダーと、ノスタルジーの香りがやさしさを包み込んでいるような印象。いいなぁ。
こちらは文庫版。マスクドボールは変わってないみたい。
一方天帝妖狐のほうは全面改稿といってもいいくらいに別物。
最初っから顔を隠している30過ぎの夜木、「あんこ」ではなく「きょうこ」で早苗含め名字は登場せず、わかりやすい悪役の登場によりミステリ部分はなくなって(しかも名字は変わってない)、骨川もいなくなって切なさ分の増強が図られています。
夜木の職場が工場になり、高度経済成長期のような雰囲気が漂っています。獣になった夜木の心理描写が緻密で、犯してしまった罪の重さがより押し迫ってくるのはこちら。向こうの方が人殺しちゃってるんだけど。
新書と文庫、どちらが好きかと言われればかろうじて新書かな。ノスタルジーとタル屋をめぐる攻防と杏子のエピローグが好き。どっちも好きな部分がなくなってしまっているので同じくらい残念ではあるのですが。あーでもところてんも好き。
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