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死にぞこないの青 乙一

死にぞこないの青 作:乙一 (幻冬舎文庫)

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫) ISBN : 4-344-40163-8 発行年月 : 2001.10

今、「『暗いところで待ち合わせ』の兄的作品!」なんて帯がついてますが、この「死にぞこない」で削ったエピソードを膨らませたら「暗いところ」になっただけで、主人公の年齢も雰囲気も全然関係ないような……まあいいや。

ホラーですね、ホラー。あくまで「乙一的」に限定した話ではありますけど。裏表紙で「ホラー界の俊英」って紹介されてるし。太っててどんくさい小学生の男の子が、ふとしたことからクラスの最下層に認定されて、1学期を過ごすうちに幻想のパートナーを手に入れて、這い上がる物語。

「ビックリマンチョコ」とか「おぼっちゃまくん」とかがね、もう同世代だなぁと。「ゾイド」はアニメになってからしか知らんかったけど。そうなんだー、歴史長いんだね。

「BULE」がやはり頭をよぎるのですが。彼女は信じて疑わなかったけど、マサオは何事にも怯えている男の子。勉強を頑張っても、たった一つの得意スポーツ・水泳で上手く泳いでも、先生には怒られてしまう。そして余計に怯えてしまう。
途中先生との対決シーンとかは気分がどろどろしてもう読みたかねーよ! となったが、読後感はそんなに悪くもなく。よくもないけど。ああもー、イジメだけはなぁ、本当に気分をへこませてくれるよなぁ。家族に絶対知られたくないし。でも「死ぬ」よりも「殺す」を選択する人は、前向きっちゃ前向きなのかな。アオも含めてマサオなのだから。
「好きなように」書くとこうなるのか。
拘束服の二重人格(?)なんて聞くとなにか思い出すことがありますが気にしない。

「がんばってる結果がこれだから、しょうがないでしょ」
いい言葉だ。しょうがないって思えるようになったら、前向きの第一歩。

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きみにしか聞こえない Calling You 乙一

きみにしか聞こえない―CALLING YOU 作:乙一 イラスト:羽住都 (角川スニーカー文庫)

きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫) ISBN : 4-04-425302-1 発行年月 : 2001.6

Calling You
ドラマCDにもなった作品で、期待が強すぎたのかスニーカーの乙一を集中的に読みすぎたのか、「乙一的ダメな主人公」に感情移入できなかった。不思議なことが起こるまで努力しないんだもん、この人たち。死んじゃったのも好きじゃないんだ。わたしはきっと、読書人として不幸な部類に入るに違いない。カムバック、素直なわたし。
ちょっと不思議な出来事を通じて勇気を手に入れる女の子の話。
しかし、メールだったら成り立たないところが微妙なバランスですね。上手い。

傷―KIZ/KIDS―
特殊能力を持った少年アサトと、暴力のために特殊学級で出会ったオレ。
ちょっと先が読めたのもあるけど、なんか狙われすぎてるような気がして。優しさが染みこんでこなかった。
痛々しすぎませんか、アサト。シホがな。人ってそんなこともできるのか、と悲しくなります。
でも分かり合える人がいたのはいいね。あったかくなる。希望の持てるラストなのはさすがだ。

華歌
コレは好き。一昔前のサナトリウムみたいな病院が。気に入るポイントが前2作とどこが違うのか自分でもわかならないです。
しかし列車事故多いな。騙された後「はぁ?」としか思わなかった自分が嫌だ。いやでも里美が男ってやっぱ反則だろ。なんで産科に子供が入院してるねん!

でも、せつないのが好きな人はワンコインで楽しめる短編集ですから、どうでしょうか。

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失踪HOLIDAY 乙一

失踪HOLIDAY 作:乙一 イラスト:羽住都(角川スニーカー文庫)

失踪HOLIDAY (角川スニーカー文庫)

ああ、こんな挿絵なら外で読んでて本文中に出てきたのを見られても普通の文庫と言い張れるかも……なんて思った時点でなんだか負け組みのような気がしないでもないけど気にしないっ!

しあわせは子猫のかたち ~HAPPINESS IS A WARM KITTY~
ほんの少しホラーといえなくもなくて、ほんわかしててあったかくて、ちょっとせつないみすてりーな乙一の真骨頂。幽霊との不思議な同居が、乾いた学生に潤いを与えるようである。
しあわせだなぁ。この喪失は幸せを打ち消すものじゃないことを確信する。幽霊の雪村がかなりいい味を出している。でも、猫だけは外に出れたって言うのがちょっと反則じゃないかね、と思わなくもない。

失踪HOLIDAY
家出したものの帰るきっかけがなくなってしまい、お手伝いさんの部屋で自部屋に侵入する義母を見張るつもりが狂言誘拐になって、ちょっとした春休みの冒険になってしまった話。
小学生の悪巧みってことで「夏と花火と私の死体」を思い出すような構成であるが、わがままお嬢様とドジっこで頼りない下僕の娘というデコボココンビがなかなかにやるのだ。
時折はさまる「いや断じてそうではないのである」がコミカル感を出していて、ああ、乙一だなぁと思う。
血の繋がらない家族でも、ちゃんと温かいってのがいいね。そこが書けるのが面白い。

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天帝妖狐 乙一

天帝妖狐 作:乙一 (集英社文庫)

天帝妖狐 (JUMP j BOOKS)

乙一の二作目短編集。図書館で借りてきたけど、なんか文庫版とは内容が違うらしい。なにい! じゃ絶版にするなよ! 

A MASKED BALLは、ネットの中のようなやり取りがされる学校のトイレのラクガキからきっかけで起こるちょっとだけミステリー。
コンビニがあるんだから現代なのだろう。ということはやはりV3は年配の方なんだろうけど、なぜにその名前をペンネームにするか。あまつその由来まで語るか。露骨すぎないかなぁ。
それと、ラクガキは一度始まったら止まらない。止めろってことが書いてあってもね。
正体についてはほどほどにビックリできました。まだ大丈夫!

天帝妖狐はこの世ならざるものに少しずつ変身しながら、あることをきっかけに完全な化け物になった人が語る顛末。
ちりばめられた伏線に、意外な犯人、ちょっとさみしい読後感、と乙一分を存分に供給できるはず。
汽車、村祭り、木の電信柱、地上げ、テープレコーダーと、ノスタルジーの香りがやさしさを包み込んでいるような印象。いいなぁ。

天帝妖狐 (集英社文庫)

こちらは文庫版。マスクドボールは変わってないみたい。

一方天帝妖狐のほうは全面改稿といってもいいくらいに別物。
最初っから顔を隠している30過ぎの夜木、「あんこ」ではなく「きょうこ」で早苗含め名字は登場せず、わかりやすい悪役の登場によりミステリ部分はなくなって(しかも名字は変わってない)、骨川もいなくなって切なさ分の増強が図られています。

夜木の職場が工場になり、高度経済成長期のような雰囲気が漂っています。獣になった夜木の心理描写が緻密で、犯してしまった罪の重さがより押し迫ってくるのはこちら。向こうの方が人殺しちゃってるんだけど。

新書と文庫、どちらが好きかと言われればかろうじて新書かな。ノスタルジーとタル屋をめぐる攻防と杏子のエピローグが好き。どっちも好きな部分がなくなってしまっているので同じくらい残念ではあるのですが。あーでもところてんも好き。

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さみしさの周波数 乙一

さみしさの周波数 作:乙一 イラスト:羽住都(角川スニーカー文庫)

さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫)

表題作はなし。でもよくこの本を表せてるタイトルだ。透明感がすばらしい。
うん。さすがというかなんというか。短編にはキレがある。どの物語にも愛が溢れてる。
苦しんで書いたんだとしてもちゃんと切なさ出てるよ元祖小生。
いや、ちょっと嬉しかったんだ、小生キャラのあとがき。他のスニーカーもそうなのかな?
GOTHの巻末の予告……? 覚えてないな。なんかあったっけ?

未来予報
うん、古寺の予報の仕方に含みがあったんで予想ついちゃったけど、温かくていいなぁ。前向きな勇気を出せた主人公に拍手。

手を握る泥棒の話
「汗」は別に握ってないのでご注意をば。初映像化された物語。
思わず唸ってしまうようなアイディアは相変わらずで、ほっこりできるエンディング。
なぜこれが選ばれたのかはよくわかる気がしますよ。

フィルムの中の少女
来た来たホラーだー! と思ったらそうでもなく。
乙一が怪談に味付けするとこうなりました。映画研究会会員と作家のひとコマ。
一人称の「……」が少々うっとうしいですがやがてそれも吹っ飛ぶ吸引力。

失はれた物語
後発ハードカバーの表題作品。
そうきたか。指だけの存在が自殺を決意するまで。
やりきれないねぇ。これぞ乙一な一編。

余談
「乙一」=「GOTH」=「殺人事件」がようやく結びつき始めたらしい母が、「短編の名手・乙一の傑作集!」で結ばれる裏表紙の推薦文に戸惑っておられました。
うーんと、乙一には白乙一と黒乙一があってね……あー説明すんのめんどくさ。
にしてもあの説明文はネタバレしすぎだと思うよ。

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ライトノベルを中心に、ぐだぐだとバカなコメントを書きます。やってるときは燃え多め。

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